パッド印刷の極み”重ね印刷”
パッド印刷を極めていくと、”重ね印刷”とか”合成印刷”という精度と根気の求められる”匠の技術”の粋に達します。八尾ものづくり達人賞をいただいた阪野雅則君の技能を紹介します。
①デザイン図面から完成イメージを読み解く技能
デザインの平面図面を読み解き、完成をイメージしながら印刷計画を立てます。これには、デザイナーと密接にコミュニケーションを行い、デザインのコンセプトや意図を把握することが必要です。また、印刷素材の特性や色の表現方法について、詳しい知識を活かしながら、最適な印刷方法を提案できます。
②製版データーを、凹凸や、曲面などに合わせて補正する技能
パッド印刷では、まず印刷面に使う「版」を作るところから始まります。技術的に難易度が上がるのは、凹凸や曲面があると、平面データーのままでは、実際の印刷がずれてしまう場合です。
そのような時は、「版」を作り、試し印刷をして、データーを調整し、また「版」を作り、試し印刷をして、データーを調整する、という工程を繰り返していきます。
それが”重ね印刷”となると、重ねる回数だけ「版」を作っていく必要があるので、気が遠くなる工程が関係しています。経験値に基づく「版」作りが、パッド印刷の”重ね印刷”に要求されるのです。
阪野氏は、製版データーの元となるフィルムの段階から、ピッチ調整を指示します。製版データーを凹凸や曲面に合わせて細かく調整し、印刷に最適な状態に仕上げます。
③治具を作成する技能
完成した「版」を、製品の同じ位置に精確に重ねて印刷するためには、製品を固定する”治具”が大切です。ロット数が比較的少ない場合は、この治具を作るところから始めます。
治具は、印刷物が正確に位置づけられるようにするための、特別に設計されたもので、阪野氏は、印刷物の形状やサイズに合わせて、治具を正確に作成することができます。
製品の形状に合わせてパッド印刷の際にずれることが無いように仕上げていきます。これにより、印刷物が位置ずれすることなく、高品質で美しい仕上がりを実現することができます。
④色を調色する技能
製版ごとに使用するインクを1色ずつ、指定の色に合わせて、色を調色します。
阪野氏は、顧客の要望に応じて、パントンカラーやCMYKカラーなど、様々な色の指定に対応し精確に調色することができます。
一つの印刷に、製版を30枚以上使用する場合は、30回以上調色を繰り返すこともあります。色合いが正確で美しい印刷物を製造するために欠かせません。
⑤寸分狂わずに印刷する技能
パッド印刷では、シリコンパッドを使用してインクを製品に転写するプロセスでは、パッドの位置と角度を微調整することが必要です。
パッドが正しい位置にある場合でも、微妙なズレがあると、製品に印刷される図像が歪んでしまったり、色と色が重なってしまうなどの不具合が生じます。
阪野氏は、パッドの形状や固さ、位置などを選定し、機械を微調整しながら、テスト印刷を繰り返し、寸分違わぬ精度で印刷できるように調整していきます。
30回以上重ねる場合、最後の1回がずれてしまうと一からやり直しです。素材によっては、やり直しが難しい素材もありますから、何度も何度もテスト印刷をして、失敗しないように印刷していきます。(“ダットサン”ミニカー印刷と匠の技術工程をご覧ください。)
超絶な特色の調合技術を駆使して作り上げた”特色”を、何回、何十回と”重ね印刷”を行えるのは、”パッド印刷の極み”と言わざるを得ません。弊社では、同業他社様で断られた案件なども沢山お受けしてまいりました。業界のプロフェッショナル御用達のプロダクトなどのオリジナル製品も手掛けております。
通常のパッド印刷とは?
パッド印刷とは、平面的な素材や曲面に対して、インキを転写するための印刷方法です。以下は、パッド印刷の特徴です。
- 曲面印刷が可能:パッド印刷は、曲面や凹凸面に対しても印刷が可能なため、広範囲にわたる素材に対応できます。
- 精密印刷が可能:パッド印刷は、微細なディテールまで印刷することができ、高精度で細かいパターンを表現できます。
- 印刷色のバリエーション:パッド印刷では、さまざまな色のインキを使用でき、特殊な効果を持つインキを使用することで、多様な表現が可能です。
- 単価の低減:パッド印刷は、大量生産に適しており、単価の低減が可能です。また、同じ色でも表現方法を変えることができるため、単価の異なる商品でも同じ印刷技術を使用できます。
- 柔軟な対応性:パッド印刷は、インキの種類や印刷する素材に合わせて、機械や条件を変更することができるため、柔軟な対応性があります。
以上が、パッド印刷の特徴です。パッド印刷は、広く使用されており、高精度な印刷が求められる電子部品や自動車部品など、様々な分野で使用されています。